正直これだけ聞くと同情の念が湧かざるを得ません。

 しかし、それと“殺人”という“絶対的な罪”は別個に考えなければなりません。

 それがわれわれ警察の役目なのですから。

「なるほど……ありがとうございました。ん? どうやらアリバイの裏取りが済んだようですね」

 さっそく報告を受ける五十夜警部補。

 これで犯人が決まるでしょうか……。

「ふむ……そうです、か……」

 報告を聞き終わるよりも前に、眉をぎゅぎゅっ、と寄せて渋い表情になる警部補。

 どうしたのでしょうか?

「どうやら……皆さんのアリバイは確かなようです、ね」

 重々しく吐かれた言葉が、予想はずれの悔しさをはらんでいます。

 と、いうことはここにいる人たちは、全員無実?

 捜査は一からやり直し?

「何か……、引っかかるんですよねぇ……」

 そういって腕を組む五十夜警部補。

「じゃぁ、私たちの無実は証明されたということですね? でしたらもう帰宅させていただいてもいいかしら?」

「そう、ですねぇ……」

 警部補はまだ納得がいっていない様子ですがこれ以上ここに皆さんを拘束しておくだけの理由がない以上は、その要望を拒否する権利はわたしたちにはありません。

「じゃぁ帰宅させていただきますね。それでは……」

「申し訳ありません。お手数をおかけしました。表までですが送ります。りおさん」

「あ、はい!」

 警部補にいわれ、皆さんを連れて厨房を出ようとしたところ、ふとひとつ気になりました。

「あの、伊地山くん?」

「はぁ、なんでしょう?」

「わたしたちまだとうぶん現場にいることになるだろうから、空調の切り方教えて欲しいんだけど……」

「あぁ、オンオフは右上のスイッチで、その下の2つのスイッチがそれぞれ冷房と暖房の──」

 そのときでした。


「そうか!!」


 警部補が突然叫んだのです。