○伊地山くんの場合

「え~……どうですか?」

「どうですか? ってどういうことですか?」

「いえ、別に。まぁ一応聞いておきましょうか。アリバイは?」

「は、はい! その時間は友人の家に遊びに──」

「そうですか。ありがとうございます」

「いえ……って、えぇ!? それだけですか?」

「はぁ。そうですが、何か?」

「いや、何かって。その友人が共犯だったりとかで虚偽の証言を……」

「あぁ、まぁ、大丈夫なんじゃないですか?」

「そ、そんな! もっとちゃんと調べて下さいよ!!」

「なんですか。そんなに犯人扱いされたいんですか?」

「いや、そうじゃないですけど、なんだかやけに“ぞんざい”な扱いじゃないですか?」

「いいことじゃないですか」

「はぁ、まぁそうなんですけど。なんだか釈然としないというかなんというか……」

「ふぅ……とりあえず忙しいので何か用事があれば誰かそのあたりにいる人に話しておいて下さい」

「え、あ、そんな……あぁそうだ! と、とっておきの情報とかありますよ!!」

 背中を向けようとしていたところをピクんっ、として立ち止まり、ゆっくりと向き直る五十夜警部補。

「いっておきますが、実にならない情報であれば即帰ってもらいますよ?」

「は、はい!」

 伊地山くん、思いっきり嬉しそうに頷いちゃってますけど、即帰らせてもらえるならそれでいいような気がしないでも……。

 まぁ本人がやけにニコニコしているので放っておくとしましょう。

 何より、犯人を絞る有力な情報があればそれに越したことはないのですから。