プルルル プルルル プルルル


突然、甲高い音がナオのポケットで鳴った。

この音は…ナオの仕事のほうのスマホだ。

ナオはスマホを取り出し、画面を見て表情を曇らせ、はあっとため息を吐いた。

「ちょっと抜ける。すぐ戻る」

言いながら立ち上がり、足早に外へ出て行った。

「いやーでも本当によかったよなあ。直斗はずっと忘れられない人がいたから…」

「おい、明里ちゃんの前でそんな話…」


『忘れられない人』…?


「忘れられない人というのは?」

本当はショックだったけど、酔っているふりをして、平然を装って問いかけた。

私があまり気にしていない様子だったことに安心したらしく、さらに男性の口が緩む。

「高校の時の彼女らしいよ。
大学の時、けっこう告白されてたのに片っ端から断ってたよな。
俺だったらハーレムにして遊びまくるのに」

周りから笑い声が飛ぶ。


忘れられない人…
高校の時の彼女…?


高校の時ということは、もう10年以上前だ。

ナオは、彼女のことをずっと引きずっていたのかな。

だから結婚相手を見つけられずにいたのかな。