杏美side

私が向かっているのは、屋上に続く階段の裏。

ここには人が来ないし、来てもみんなが屋上に行ってしまうから、休むのにぴったりだ。

うす暗くて、不気味なのが難点だけど。


私は永塚さんに興味を持った。

自分をとても下げる態度や妹に対する過保護、そして何よりあの口調。

ゆるい。
とにかくゆるい。

まあ、そんなことを思いながら足を進める。

後ろに永塚さんはちゃんとついて来てる……あれ?


「永塚さん?」


「……ん~?」


なぜ止まっているのだろうか。


「永塚さん?」


もう一度呼ぶと。


「……ごめん杏美~、ちょっと来てくれない?」


どうしたんだろうと思いつつ、永塚さんのところへ行く。