今回こそは、とわたしは1人意気込んでいた。
何をそんなに力んでいるのかといえば、何を隠そう今日は高校の入学式…。
わたしは根暗な中学生活を終え、ここ、兎之山(とのやま)高校で新たな一歩を踏み出そうとしていた。
そう、高校生といえば青春!青春といえば彼氏!わたしの頭の中では、バラのような生活が浮かんでいた。
自然と頬が緩む。
「あれ、葉月?葉月じゃない!?」
「!?」
突然後ろから声が聞こえて振り返ると、そこには中学の時同じクラスだった羽田 あかりが立っていた。
「あ、いや!あの…」
まずい…非常にまずい、高校生デビューを決めようとしていたわたしには非常にまずい展開である。
あかりとはいつも一緒に行動していた。
もしもわたしが高校生デビューなんて中学の時は考えてもいなかったであろう単語を実践しようとしていると知られたら…。
(きっと、すごく笑われるんだろうな…)
そんなことを思っていた。
「おーい?聞いてる??」
「う、聞いてはいるけど……」
俯くわたしの顔を覗き込むあかりをよく見ると、中学の時と雰囲気が変わったことに気づく。
「あれ、あかり雰囲気変わった?」
わたしが尋ねると、あかりはふっふーんとイラつくほどのドヤ顔をしてこちらを見てくる。
「さっすが親友!よくわかってるじゃないの!!」
バシン!と背中を叩かれる。
……痛い。
「実は、高校生デビューをしようと思ってね!」
あかりのその言葉に、わたしは開いた口が塞がならかった。