無理やり手を引いて私は零を教室から出した。
蓮だったらこんな風に手を焼かせることなんてないのに、なんで零と同じクラスになっちゃったんだろう。
蓮と同じクラス、なんて贅沢は言わないから、せめて零とは離してくれたら良かったのに。
「っていうか、待って」
選択授業へ引っ張って連れていくはずが、なぜか私が零に引っ張られている。
それはまったくの逆方向で、私が足を止めようとしても、力の強い零には逆らえない。
「零っ……どこ行くの!?」
まるで大型犬に引きずられる飼い主のような気分だ。
「うるせえから、お前も道ずれだ」
「は?意味わかんない!」
そんな押し問答をしてる内に廊下には3時間目を告げるチャイムが鳴り、気づけば零に保健室へと押し込まれていた。
「ちょ、ちょっと!」
ドアの前には【出張中】の札がかけられていて、養護教諭はいない。零はバタンッ!と乱暴にドアを閉めて、私の文句も聞かずにベッドへと横になりはじめた。
そんな自分勝手な零に、私はため息しか出ない。
「サボるならアンタだけサボればいいでしょ」
授業はすでに始まってしまったし、途中から参加するのも気まずいというか、あの注目を浴びる視線が苦手だ。