そして学校が終わり、家に帰るといつもならまだ仕事のはずのお母さんがリビングにいた。

しかもしているのは晩ごはんの支度ではなく、お母さんがいつも使っている日常品や化粧水などを大きなボストンバッグへと詰めていた。


「ど、どうしたの?」

旅行に行くなんて聞いてないし、お母さんの仕事は代わりがいないからと長期の休みはここ数年とれていないはず。


「あ、おかえり。急で悪いんだけど、今日からこの家には住めなくなったから」

「え、は、はい!?」

ちょっと耳の調子がおかしいのか、お母さんの言葉がうまく届いてこなかった。


「私は今日から社宅に住むことになったから。お父さんには連絡したし、明日の朝に業者が――」

「ちょ、ちょっと待って!」

思考がまったく追いつかない。


「どういうこと?家に住めない?明日には業者?ワケわかんないよ。もしかして夜逃げ的なこと?まさかお父さんに多額の借金が……」

「あはは、そんなわけないでしょう」


私の深刻とは真逆に、お母さんの笑い声が響く。


「ほら、家のリフォームよ」

……リフォーム?