「顔、真っ赤」
「だ、誰のせいよ!」
「俺だろ」
「もう、本当に心臓に悪いことはやめて」
私は文句を言いながらすぐにベッドから脱出した。
気づけば3時間目は残り10分。でもまた蓮が戻ってきたら困るし、零といるとロクなことがないと再確認したため、私はドアのほうへと乱暴に足音を響かせる。
「莉子」
その背後で、私を呼ぶ声。それでも私は無言でドアへと手をかける。
「片想いなんてしても無駄にこじらせるだけだろ。さっさと告白して、さっさと振られちまえ」
「うるさい、バカッ!!」
私はバタン!と勢いよくドアを閉めて、廊下へと出た。
災難とは、きっとこういうことを言うのだろう。
窓に映る自分の顔がひどく疲れていて、しかも髪の毛はボサボサ。ため息をはきながら分け目を直して、今さらながら蓮にバレなかったことにホッとした。
もしかしたら蓮は、私が零といるところを見てもなんとも思わないかもしれない。
むしろ『いつの間にそんな関係に?』と、普通に問われそうで、そんなことになったら私は我慢しきれずに泣いてしまう。
だって、普通にされればされるほど、私への特別な感情はないということだから。