「必死になって、バカみてー」

「……っ。バカでいいよ!私が蓮に片想いしてても零には関係ない――」

その瞬間、ふわりと私の髪の毛が空中に浮いた。


「本当に、バカだな。お前は」

瞬きをする暇もなく、気づくと私の上には零がいて、私はベッドへと押し倒されていた。


ドクン、としたのは、ただビックリしただけ。

こんな角度で見上げる零の表情はいつもとは違って、その射るような瞳を私は直視することができなかった。


「な、なんなの。早く退いてよ」

逃げたくても、零に掴まれている両手は力をいれてもびくともしない。


「恋煩いって、立派な病気らしいよ」

私を見下ろしながら、またいじわるなことを言う。


「お前見てると、なんかムカついてくるんだよ。恋に恋して、伝える勇気もないのに気持ちだけ立派に育って勝手に煩ってる」

零はそう言って、ネックレスをグッと引っ張った。


首の後ろが締まることよりも、チェーンが切れてしまう怖さのほうが先立って「や、やめて……」と声を出した瞬間に、ガラッと保健室のドアが開いた。

聞こえてきた声はふたつ。