シルバーの華奢なチェーンに、ブルーのラメが入ったイルカがついていて、手のように見える胸びれの部分には丸いガラス玉がつけられている。

零は人差し指でイルカを持ち上げるようにして触り、やっぱりその瞳には悪意が感じられた。


「や、やめてよっ!」

宝物を守るように私はネックレスをぎゅっとする。


「わざわざ隠してまで、つけてくるものかよ」

「零には関係ない」

「そんなの安物だろ」

「だから、零には関係ないっ!」

私はキリッと零を睨んだ。


零はすぐに否定するようなことばかりを言うけど、このイルカのネックレスは私にとって意味があるもので、こうしてバレないように学校につけてくるほど、肌身離したくないものなのだ。

だってこれは……。


「蓮が私にくれたものだから。零には分からないだろうけど、これは宝物なの。なにより大切なものなの!」


10歳の誕生日に、こっそりとふたりで行った水族館。

その時に蓮が私にプレゼントしてくれたもので、私が蓮への想いに気づいた瞬間でもあった。


このネックレスと一緒に、蓮は私に初恋をくれた。

だからネックレスをしていると、私は蓮のことをもっと傍に感じられる。