「あとさ……」

私の髪の毛から手を離した零は再びガサッと動いて、今度はグイッと私の顎を掴んで、強制的に顔を零のほうへと傾けさせられている。


「はに、すんの」

零は大きな手で私の両頬をぶにゅっと潰した。だからうまく喋れないし、絶対ものすごい顔になってると思う。


「なんか顔もヘンじゃね?」

それは零がヘンにしてるんじゃないの、と言い返そうとすると私の頬を潰したまま零の親指だけがスッと妙な動きをした。



「なんで化粧なんてしてんの?」

なぞられたのは、淡いピンク色のリップがついていた唇。


化粧だって今日にはじまったことじゃないけど、休み時間にしいちゃんにメイクを教えてもらったから、いつもよりは濃いめな顔にはなっている。


「してもいいでしょ、別に」

私は不機嫌に、零の手をはらった。