「もう、子供じゃないって分かってるんですけどね」

宮本さんの顔は、ちょうど死角で見えない。
でも、なんとなくどんな表情か分かってしまった。

「…宮本さん、安心してよ」


ゆっくりと話しかけると、ほらやっぱり、私が見たくない顔だ。
実らない片想いとか、埋まらない歳の差とかを、無理矢理感じさせられる顔。

「未来」

「私、ちゃんとやってるよ。ここでも、施設でも、どこでも。ほんと、過保護で困るって」


笑いを混ぜて、おどけたように言う。
笑い飛ばして、見ない振りをするぐらいしか、方法を知らない。


「そうね、過保護って言葉ぴったり!」

「やめて下さいよ、奥さん、そんなんじゃないですから」


宮本さんが、笑いだすのを見て、安心した。


「帰ろ、宮本さん」

「…そうだな」


奥さんに挨拶をしてから、私は、一週間に一度の宮本さんの家に向かった。