夕方、家族で隣の家に挨拶に行った。

 南朋は嫌だった。

 知らない人…… 

 知らない顔……



 やっぱり、いつもの通り翔は元気に挨拶する。

 南朋はやっとの事で自分の名前を言うと、チラッと少年の顔を見た。

 六年生と言った彼の顔が、大人に見えて南朋は恥ずかしくなって目を逸らしてしまた。


「七時半に、公園に集合だよ。公園わかる?」

 優一の優しい声に、南朋はうなずく事しか出来なかった。


 南朋は家に帰って、返事も出来なくて恥ずかしかったと、母に愚痴ぐちと怒られた。




 次の日、翔が公園へ行くと言い出した。

 翔とは違って、南朋は新しい公園で、新しい友達を作る勇気がこれっぽっちも無い。


 やはり、翔が出かけると、母は家で絵を書いている南朋にイライラしだした。


「翔と一緒に遊んでらっしゃいよ。お友達作らないとでしょう」


「今は絵を描いているからいい」

 南朋のその言葉が、益々母をイライラさせてしまった。


「いいから! 行って来なさい。翔の面倒見てよ! 一人じゃ心配なんだから!」

 母の怒鳴る声に、南朋は渋々公園へと向かった。


 南朋は公園の門に寄り掛かり、翔が遊び終わるのを待つ事にした。

 どうせ誰も気が付かないだろうし……


 そう思っていたのに……


「どうしたの?」

 優一の声だと南朋はすぐに分かった。


 まさか、初めての公園で声を掛けてくる人がいるなんて…… 

 どうして?

 南朋は声が出ず、首を大きく横に振ると、逃げ出てしまった。


 後悔したが、もう戻れなかった。


 勿論、母に怒られもう一度公園に行けと追い出されたが、公園には行けず家の門の影に隠れていた。