新学期の朝が来た。

 この日は、転入生の南朋は、母親の車で学校へ行き、まだ集団登校も始まっていなかった。



 学校から戻ると、婆ちゃんの部屋に、南朋の婆ちゃんが来ていた。

 なんだか仲良くなったようで、お互いの家を行き来しては、世間話を楽しんでいるようだ。


「南朋ちゃん、何組になったかね?」


「南朋はおとなしいで、お友達出来るかなあ?」


「子供だでぇ、大丈夫ね」

 婆ちゃん達の会話が優一にも聞こえて来た。



 優一は鞄をおろし、和希を連れてすぐに玄関の扉を開けた。



 南朋は紺色のワンピースにランドセルをしょって、車から降りたところだった。

 優一はやっぱり綺麗な子だと、つい目で追ってしまった。


 翔がいつものように顔を出し、優一達を待っていた。


「公園行く?」

 優一が聞いた。


「うん!」

 翔は大きく返事をして出て来た。


「南朋ちゃんもおいで」

 優一は南朋に声をかけたが、南朋の表情は明らかに不安気だった。



 しかし、優一の声に、南朋は大きく肯いた。



 公園では、子供達が何をして遊ぶか検討中だった。


「南朋ちゃん、何組になった?」

 和希が優一より先に気になっていた事を口にした。


「一組」

 南朋の声は小さく、不安な表情になった。


「…………」


 優一も和希も何も言えず、青ざめた。


「担任、怖いよな」


 和希がぼそっと言った。


 和希は三組で南朋とは別のクラスだ。


 南朋の不安な表情を見た優一は大きな声を出した。


「落とし穴作ろうぜ!」



 優一の声に皆が賛成し、家の近い子達は、スコップやら持ち寄って来た。