「あ、そういえば今年はお菓子くれないの?」


完全に忘れていたその存在に、私もハッとしてかばんから毎年恒例のお菓子を取り出す。


「今年もマカロン?ありがとー、俺が好きなの覚えててくれるんだよな!」

そうだよ。そもそも睦希が喜んでくれるのが嬉しくて、私はマカロン作りをするようになったんだから。


でもね、それだけじゃないの。




「そうかもね。でも好きな子がいるのなら、もうこういうのあげちゃいけないよね。

それが最後のお返しってことで。」


もうこんな空気が耐えられそうもなくて、ちょうど家の前で立ち止まる。強引だけど、もう話を聞きたくない。


「え、はる...「また話聞かせてね。じゃ、私帰るから!」

本音を言えば話なんて聞きたくなかったけど、一刻も早く帰りたくて。大好きなその声に早口で言葉を並べた。





そのまま彼に背を向けて小走りに家の扉を閉める。

ずるずるとドアに背中を預けてしゃがみこむと、涙が出そうになるのを必死に堪えた。


泣いたら、私の負けになってしまう。
告白もできなかった私のちっぽけな意地だ。

「睦希が好きだよ。...気づけ、バカ。」



マカロンのお返しの意味は、特別な人。

私の場合、恋愛的な意味。


でもそれが無理ならせめて、幼馴染みでもずっと大切な存在でいてね。どうかお願いします。