『タケル…』


思わず呼んでしまった名前


タケルがゆっくりとシキの方へ振り向く


『お姉ちゃん!!』


その顔は太陽にも負けないくらいの晴れやかな笑顔だった


泣いているのではないかと心配していた面もあって

少しだけ体の力が抜けた


しかしタケルはあたしを見るとすぐに曇った顔をした

『どうして泣いているの?』



えっ……?

泣いているのはタケルではなく
シキの方であった


我に返り自分自身を見回すと

寝起きで飛び出したせいか

髪はボサボサ
化粧は昨日のまんま
パジャマでお出掛け

といったところだ



あたしとしたことが
何を感情的になっているのだ

ガキ一人のために
夜の女王?と呼ばれるあたしが
こんなバカみたいな格好で取り乱すだなんて



『出掛けるよ』

シキは恥ずかしいのをひたすら隠すようにタケルに言い放ち
そそくさと一人中へと入っていった


タケルは焦って
シキを追いかけるように中に入る



その時シキは思い出したように言った


『おぃチビ、おまえ幼稚園行った事あるか?』