前回、伊澄くんに会えなかった時の。
苦しくなる感覚は今でも忘れられない。
今日もそうなるかもしれない。
それでも、なんだか今日は待っていたい気分だった。
30分くらいたっただろうか。
空がだんだんオレンジ色に変わり始めた頃。
公園の入り口から足音が聞こえた。
もしかして、伊澄くん?
葉っぱを踏む音に耳を澄ませながら。
現れる人の姿をじっと見ていると。
さわさわ、髪が風に揺れて。
夕日の眩しさに片目を閉じながら歩く伊澄くんがいた。
「伊澄くん。」
「え、お、小笠原さん!?」
私がいることにびっくりしたのか。
私が声をかけた途端。
伊澄くんは顔を真っ赤にして目を見開いた。
また、耳まで赤い。
かわいい……。
立ち止まった伊澄くんは。
視線を左右に泳がせた後、ゆっくりとこちらに向かって歩いてきて。
隣のブランコに腰を下ろした。
「いると、思わなかった。」
ずっと会わなかったし、と付け足した伊澄くんの言葉に。
少し疑問を覚えた。
ずっとって。
もしかして伊澄くん、毎日公園に来てたの?
……どうして。
変に期待してしまう。