うわあ、こんな姿誰にも見られたくない!
さっきまでの浮ついていた心が一気に冷め切って。
羞恥心でいっぱいになった。
は、恥ずかしい……。


「小笠原さん?」


小笠原は、私の名字だ。
知り合いかと思って前を向くと。


「伊澄くん?」


伊澄くんがブランコの柵の外側に立っていた。
話したことないけど一応顔見知りだし。
自分の事を知っている人物に見られたと分かると。
恥ずかしさで顔が赤くなるのが分かる。


「あ、あの……。」


なにか弁解しないと……!
そう思ってもなかなか言葉が出てこない。
っていうか、早くブランコ止まって~!
まだまだゆらゆら揺れるブランコが恨めしくなってくる。


ひとり、テンパっていると。
リュックをその場に下ろした伊澄くんが。
私の隣のブランコに腰を下ろしてゆっくりと漕ぎ始めた。


「なんか、時々漕ぎたくならない?
 懐かしくて。」


「……なる。」


「だよね。」


ぎこちなく笑った伊澄くんは。
さっきまで私がしていたようにブランコを大きく漕いでいた。