「よろしくね、小笠原さん。」


「こちらこそ、よろしくね苑田くん。」


苑田くんとは時々挨拶を交わす程度には話をしていたけど。
こうやって面と向かって話すのは半年ぶりだ。


あ、身長また伸びてる?
前よりも顔見づらくなった。


苑田くんは一緒にいなくてもよく噂を聞いていた。
3年の女子に告白された―とか。
はたまた、1年に告白されたとか。
噂で名前を聞いていたからあんまり久しぶりな感じがしない。


でも確かに、あの時よりさらにかっこよくなった気がする。
よほどじっと顔を見ていたのか。
苑田くんに見過ぎ、と言われてしまった。
そんなに見てしまってた、私。
恥ずかしくなって顔を下に向ける。


……伊澄くん、まだ来てないんだ。


ここに高橋くんと苑田くんしかいないってことは。
まだ来てないってことだよね。
謝ろう、と息まいてた分やる気が空回りする。


結局その日、伊澄くんは始業式ぎりぎりの時間に来て。
話しかける暇もなく、あわただしく1日が過ぎていった。


始業式は午前中で終わって。
特に用事もなかった私はそのまま家に帰る。
伊澄くんと話せなかった。


半年ぶりにちゃんと見た伊澄くんは。
あの頃より少し、大人っぽくなった気がした。