『いや用があるわけじゃないんだけど……。』


歯切れ悪そうに伊澄くんは呟いた。
どうしたんだろう。
数学、分からない問題とかあったのかな。


『声、聞きたくなって……』


「えっ。」


その言葉に顔が赤くなっていく。
そ、そんなこと言われたら……。
恥ずかしくてきゅっとこぶしを握り締める。


『真子ちゃんの声聞いたらラスト頑張れるかもって思って。』


「うん……。」


『邪魔したよね、ごめん。』


「ううん!私もちょうど休憩しようと思ってたし。」


『なら良かった。』


しばらく沈黙が流れる。
こんなのは久しぶりで。
少し、ドキドキした。


「あ、明後日だね。」


『そうだね……。今から緊張する。』


「私も。何問解いても不安だよ~。」


『分かる。勉強してもし足りないって感じ。』