「なにお願いする?」


「それ言っちゃったら叶わないんじゃなかったっけ。」


「そうなの?じゃあ俺も言わない。」


「お願い事する時は、名前と住所を言うといいんだって。」


「なにそれ。」


「言うと、お願い事を神様が家まで運んでくれるらしいの。」


「今日から名前と住所言う。」


「私も、届けてもらう。」


「おみくじ引く?」


「あ、お母さんがお小遣いくれたの。
 絵馬でも書いてきなさいって。」


「いいね、でも俺自分の分は出すよ。」


「ダメだよ。いつものお礼。じゃないと手離す。」


「……甘えさせていただきます。」


手も温まった頃に参拝の順番はきて。
二礼二拍手一礼。
丁寧にお願い事をする。


“彗くんと同じ高校に行けますように。”


一文字一文字に想いを乗せて。
叶うようにって念押しして。
ちゃんと名前も住所も一緒に言って。