「ごめん、からかった。
 ありがとう、元気出た。」


「絶対迷惑になることなんてないよ!」


「小笠原さんがそう言ってくれるだけで充分だよ。」


そう笑う苑田くんは。
なぜだか、泣いているように見えた。


「ありがとう、苑田くん。
 私行ってくる。」


「頑張って、小笠原さん。」


苑田くんに背中を押されて。
手のひらのレモンキャンディーを握りしめて。
私は勢いよく走って学校を後にした。


今、どこにいるだろ。
教室で手からそんなに時間たってないし。


まだ帰り道。
なら、絶対いる。
公園、絶対伊澄くんいる。


今まででいちばんの全力疾走。
50m走より長距離走より。
全力で走る。


間に合って。
これ逃したらきっと私達。
もう一緒に笑えない。


息が切れても。
口の中鉄の味がしても。
横腹が痛くなっても。
足ががくがくになっても。