「しかもふたりは両想いっぽくてさ。俺の出る幕ないわけ。」


「そんなの、分からないよ。」


「そう?」


「苑田くんのこと好きになるかもしれないよ。」


「でも俺の気持ちはその子にとって迷惑になるんだ。」


「そんなの……。」


「小笠原さんのは違う。好き同士なんだから。思ってること言い合わないといつまでも伝わらないよ。一歩踏み出しなよ。避けられてても振り向いてもらえるまで声かけなよ。彗ならきっと応えてくれるから。」


勇気の出るおまじない。
そう言って、苑田くんは手のひらにキャンディーをひとつ置いた。


遠足の時のレモンキャンディー。
私の好きなやつ。


「苑田くんはいい人だよ。」


「えっ?」


「かっこいいし、優しいし、気配りできるし、頭良いし。女子なら絶対好きになるよ!!苑田くん選ばない子は変だよ!私だったら苑田くん選ぶもん。」


「……彗はいいの?」


「それと、これは、別……だよ。
 伊澄くんは特別だし。」