「見たって奴がいるらしいよ。夜にふたりが並んで歩いてる所。」
夜にふたりでって。
そんなことあるわけ……。
「もしかして、あの日の……。」
「マジで一緒にいたの!?」
「ち、違う!塾帰り一緒になっただけ!」
「塾?苑田も一緒なの?」
「うん。」
「そういうことか、納得。」
「私ら納得したかもしれないけど、ちょっとヤバいよ。苑田ファンの女子、真子の事めっちゃ睨んでる。」
血の気がサーッと引いていくのが分かる。
私、伊澄くんと付き合ってるのに。
ただでさえ、苑田くんと付き合ってるなんて誤解されて大変なのに。
苑田くんのファンに睨まれるなんて、
い、伊澄くんは。
教室を見渡しても伊澄くんはまだ来ていなくて。
ほっと息をつく。
でもこんな噂になってたら嫌でも耳に入るよね。
どうしよう……。
そう思っていた時、教室のドアが開く音がした。
そこに現れた人物は、苑田くんだった。
「……なに?」