「うん、言わない。」


「ありがとう。」


「俺は気付いてるってことだけ知っておいてくれたらいいよ。何かあったら力になるし。」


「どうして、そこまで。」


「……それは内緒かな。」


そういって微笑む苑田くんは。
やっぱりかっこよくて。
美しかった。



それから数日して夏休みが明けた。
伊澄くんと話すようになってからもうすぐ1年になる。
私が伊澄くんを好きだと気付いた文化祭も。
あと1ヶ月後に近づいた時。
私たちの関係が大きく揺れ動く出来事が起きた。





夏休み明け初日、塾で早起きに慣れていた身体は。
特に眠たくなる事もなくいつも通りの時間に起床できた。


今日からまた学校。
伊澄くんと、会える。何日振りだろう。
メールのやり取りじゃない、本物の伊澄くん。
話せますように。


いつもより丁寧に髪をふたつに結って。
まだ暑い夏の日差しが照りつける外へと一歩歩きだした。


学校につくと、教室がざわざわしていた。
休み明けって感じがするなあ。
教室のドアを開けると。