どきどきした。
たったそれだけ。
視線は花火を向いているのに。
神経は全部伊澄くんの方を向いている。
花火の音なんて聞こえない。
伊澄くんの声、息遣い。
そっちの方が気になる。
中3の夏、君と初めて見た花火。
一生忘れない、その景色を。
脳裏に、胸に、刻み込んだ。
花火が終わってからも。
暫く私たちは動かなかった。
ううん、動けなかった。
手を、握った手を。
離したくなくて。
それでも時間は有限で。
終電よりも早く帰らなきゃいけないから。
行こうか、伊澄くんのその一言で。
私たちはどちらともなく手を離し立ち上がった。
あっ、プレゼント……。
花火に夢中ですっかり忘れてた。
一段石段を降りた伊澄くんのシャツをきゅっと掴む。
「いずっ、彗くんっ!」
「どうしたの?」
「あの、これ……。」
遠慮がちに差し出した袋を伊澄くんは受け取り。