手を繋いでたことに気がとられてて。
あんまり屋台のほうに意識を向けていなかったけど。
このお店だけはいいなって思ってたから覚えてる。
そろり立ち寄って売り物を物色する。
値段……りんごあめ我慢したら買えるかも。
んーどれがいいかな。
あっ、これ。
伊澄くんっぽい。
他のよりも一段とキラキラして見えたそれを手にとって。
迷わずにくださいと大声で叫んだ。
喜んで、くれるかな。
こんなもので悪いけど。
でも、笑ってくれるといいな。
そう思って、伊澄くんがいる石段の方へとまた駆けていった。
*
「お待たせ!」
石段の方へ行くと座っている伊澄くんがいた。
私が声をかけると笑って今来たところといって。
隣の石段に座るよう催促してくれた。
「あれ、りんごあめは?」
「りんごあめより、べっこうあめ食べたくなって。」
本当はりんごあめ買うお金がなくなって。
べっこうあめしか買えなかったんだけど。
そんな事言えないし。