その時どんっと、人にぶつかってしまって。
今が人混みの中だと言うことに気付く。
「いこっか。」
「うん。」
またはぐれないようにしないと。
頑張ろうと気合いを入れていると。
そっと、伊澄くんの手が。
私の手を握った。
「はぐれないように……。」
耳、ううん首まで真っ赤な伊澄くんは。
私の手をそっと引いて、前を歩く。
手、握ってる。
私達、手繋いでるんだ。
遠慮がちに繋がれた手。
少し汗ばんでいて、でも温かい。
ふたりの体温が混ざりあっていく。
祭りの中の人の喧噪。
お囃子の音。
赤提灯が照らす暗闇。
美味しそうな屋台の匂い。
気になるものいっぱいあるけど。
なによりも、繋がれた手が気になる。
右手が熱い。
伊澄くんの左手に神経が注がれる。
伊澄くんも同じ気持ちかな。