本当は全然大丈夫じゃないけど。
むくれた顔を見られたくなくてそっぽを向く。


「あの、名前……」


「えっ、あっ。」


伊澄くんじゃ振り向いてもらえそうになかったから。
咄嗟に下の名前で呼んじゃったけど。
今思うと私なんて大胆なこと……。


自分の行動が今更恥ずかしくなってくる。
触れなくても分かるくらい顔が赤くなってる。
恥ずかしい……。


「嬉しかった、その名前。
 ありがとう……真子ちゃん。」


「……っ。」


名前、で呼ばれた……。
真子って。


名前を呼ばれただけなのに。
心臓を掴まれたんじゃないかってくらい。
息が出来なくなった。


どきどき、心臓飛び出ちゃいそう。
真子って名前でよかったって思っちゃった。
伊澄くんの声が私を呼んでる。
嬉しくて、どきどきして。


今、幸せだ。


さっきまでの不満とか全部一気になくなっちゃった。
単純、私。
名前呼ばれただけでどうでもよくなっちゃうんだもん。


ふたりして顔が赤くなって逸らす。