「初めてのデート、だし。
 ……かっこつけさせて。」


耳まで真っ赤にさせながら言う伊澄くんがなんだか可愛くて。
愛おしくて。でもすごくかっこよくて。
デートだって思ってくれていることがどうしようもなく嬉しくて。
こくり、頷いて。
その好意に甘えた。


電車は案外すぐ来て。
そのまま乗り込んだ。


それでも花火大会っていう事もあって人が多くて。
座ることができなかった。


ひとつだけ席空いてる。
伊澄くん座るかな。


ちらり、伊澄くんの顔を見ると。
ぱちっと目が合った。
そして伊澄くんはまた目を逸らした。


なんか、ちょっと傷つくかも。


目、全然合わないし。
今日、来たくなかったのかな。


先歩くし。
嫌だったとか。
なんか、ちょっと気分下がるかも。


私は楽しみだったんだけど。
あまり楽しそうじゃないし。
無理して付き合わせちゃったかな。
でも、誘ってきたの伊澄くんの方だし。
もう、全然分かんない。