視界に、世界に、色がつく。
もっともっと鮮やかな色がつく。
稲妻が落ちたみたいに身体がしびれる。
息の仕方を、忘れるくらい。
身体に力が入った。
「ごめん聞こえなかった。
今、なんて言った?」
「いや、何も言ってないよ!!」
私、なに言ってんの!!
もう、もうもうもう……もう!!
あのタイミングで携帯ならなかったら私。
……私、聞かれてた!!
私が好きと言ったと同時に。
伊澄くんの携帯の着信音が鳴った。
辺りに響き渡った機械音は。
私のなけなしの勇気で振り絞った声を。
いとも簡単にもみ消した。
おかげで伊澄くんに聞こえないですんだんだけど。
すんだんだけど……。
よかったんだけども!
でもなんか肩すかしっていうか。
勇気が台無しになったっていうか。
脱力する……。
まだ心臓ばっくばっく言ってる。
緊張した。
でもやっぱり。
聞こえてなくて良かった。