──「なるほど、そういう状況だったのね」
「ごめんね美紅ちゃん。やっぱり私もついて行けばよかったわ」
楓さんに連れてこられた別の和室には何故か椿さんもいた。
普通に漫画を読んでいたので驚いたけど、暇を持て余していたらしい。和服美人は漫画を読む姿も絵になっている。
先程あったことは二人に全て吐かされた。
「で、美紅ちゃんは本当に何もされてない?大丈夫だったの?」
「柊さんが助けに入ってくれたので…」
「柊君は変わらないわね~」
「やっぱ柊さんっていい男だわ…。ヒーローの如くバカ女たちを撃退して、アホな組の親父たちも一刀両断!腹筋バッキバキだし、髭が素敵すぎるし…私の好みドストライク…!」
なるほど、楓さんのタイプはワイルド系のイケメンなのか。
男も惚れる男!って感じの柊さんは確かに超モテそうだ。
「楓あんた…聖弥くんに言うわよ」
「冗談に決まってるでしょお母さん!やめてよね、聖ちゃん嫉妬深いんだから…」
なんでも、楓さんが家で柊さんの話題を出すだけで聖弥さんは不機嫌になるらしい。想像して少し笑ってしまった。
聖弥さんも超が付くくらいの男前なのに…。確かに柊さんとはタイプが全然違うけど。
「あの…、私のせいで話し合いの雰囲気悪くなったりしてないですよね…?」
言えば、何故か二人とも盛大に笑いだした。
笑う要素どこにもなかった気が…
「大丈夫。会合の席なんて毎回どこかしらの組が粛清される場なんだから。それくらいのことは日常茶飯事よ」
「そうそう。美紅ちゃんのせいで雰囲気悪くなるとかないから気にしないで。元からあの場の雰囲気なんか最悪だしね」
「この後の宴会になるとみんなケロッとして参加するから大丈夫よ」
優しい顔で、優しい声でそう言われたら頷くしかない。
たとえ私を安心させるための言葉だったとしても二人の言葉に今は甘えたい。
「それにしても…愛されてるわね美紅ちゃん」
「へ??」
唐突な楓さんの言葉に飲みかけていたお茶を危うく吹き出すところだった。
ギリギリセーフ。