迫力に圧倒されて金縛りにあったかのように動けなくなってしまったけど、




「美紅?なんでここに…」





聞き慣れた声で我に返った。




上座のすぐ近くに座っていた弘翔は怪訝な顔をしながらも来てくれた。




蓮さんは…いつの間にか自分の位置に座ってるし…。助けてくれる気は皆無らしい。




冷静になって辺りを見回せば、上座には昌さんと聖弥さん、そして柊さん。




そのすぐ下には春名、柊の若頭だろうか…弘翔の席があるのでおそらくそうだろう。




それに続く形で幹部の人たちが座っている。純さんや土方さん、高巳、春名の酒井さんなど知っている面々。




幹部の人たちとは少し距離を取って頭を下げているのは各組の組長や幹部だと思われる方々。





おそらく全部で100人近く...、圧力が凄い。







「おい柊…大事な会合に堂々と遅刻とはどういう了見だ?それに芹沢、貴様は誰の許可を得て部外者の女をこの場に入れている」







殺される。
直感的にそう思った。




私の知っている聖弥さんじゃない。





聖弥さんはプライベートでは蓮さんに敬語だ。



しかも…こんな今すぐにでも人を殺せそうな殺気…感じたことがない。




膝が震える。今すぐこの場から逃げ出したい。






──私の心中なんてお構いなしに、大声が響き渡った。





「なに言っとんじゃ!!春名の頭だかなんだか知らんが、うちの総長に喧嘩売っとんのか!?」




「おい貴様!うちの頭になんて口の利き方してやがる!」




「あぁ!?こちとら春名の下についとるんやないわボケェ!」




「兄貴になに言っとんじゃ!」




「東の糞餓鬼は黙っとれや!」





関西弁の怒号を皮切りに同盟や傘下の組の罵声が飛び交う。




怖いとか恐ろしいとかそんな生半可なものじゃない。




今にも殴り合いが始まりそうな雰囲気。




無意識のうちに弘翔の袖を強く握りしめてしまった。







「黙れ」


「ええ加減にせえよ」






一触即発の場を収めたのは聖弥さんと柊さんの低い声。




その絶対的な迫力に呑まれ、ピタリと喧騒は止んだ。




何かに操られるかのように全員が居住まいを正した。






「蓮、説明しろ」




場が落ち着きを取り戻したのと同時に、今まで静観していた昌さんが重々しく口を開いた。




やっぱり昌さんもいつもの陽気な雰囲気なんか皆無で、初めて会った時以上の恐ろしい貫禄。




あの怒号が飛び交う中でも顔色一つ変えずに土方さんと何かを話していた蓮さんは一瞬だけ柊さんに視線を投げた。





その視線に気が付いた柊さんは顎髭を撫でながらニヤリと笑った。





「その子を連れて来たんは僕や」





最初から蓮さんは何も言うつもりがなかったのか、視線だけで柊さんに説明を任せてしまった。