「ホンマかいな!?」
ただでさえ豪快な人に食い気味で詰め寄られると緊張してしまう。
それに、ワイルド系イケメンのドアップなんて慣れてないからそんなに近づかないでほしい…。心臓に悪い。
「…えっと…多分、そうです…」
誰の連れって聞かれたら間違いなく弘翔の連れなんだから、多分も何もないか。
私の言葉に驚愕の顔を浮かべた男性は『負けた…』と頭を抱えた。
私をここへ連れてきた四人はすでに泣き出しそうな顔をして、一刻でも早くこの場から立ち去りたそうだ。
そしてなぜこの人は頭を抱えているのだろうか…
「親友と賭けてんねん。弘がいつ正式に女を紹介するか」
「そ、そうなんですか…」
そんなものを賭けの対象にするな!と喉元まで出かかったけど、何とか耐えた。
だってこの人、見るからに地位が高そうなんだもん。
四人組が死にそうな顔をしているのを見ればこの人が並の極道じゃないとわかる。
「僕は30歳以降に賭けててな、彼は26か7で賭けてたんよ。やっぱ弘のことになると敵わんなぁ」
これ…私はなんて答えたらいいんだろうか。
男性の言い方からしておそらく弘翔とも親しい人なんだろうけども。
「あの…あなたは…?」
恐る恐る訊ねれば、またしても驚いた顔をした男性。
そして、またしても豪快に笑いだした。
「こんなでも結構有名なはずなんやけどな僕。なんや、ホンマに知らんのかい?」
「すいません…私、極道の人間じゃなくて…」
言えば、男性は閉じた扇子を口元にやってからニヤリと笑い、至極愉快そうにしている。
「なるほどなぁ、さすが弘」
「なんか…すいません…」
「何も謝ることあらへんよ。僕の嫁さんも元々は君と同じや」
え…?と思うと同時に、その清々しいまでの豪快さに私もつられる。
馴染みやすくて話しやすい弘翔とは違った感じだけど、この人はやっぱり兄貴肌で親しみやすい。その雰囲気に呑まれてしまう。
で、この人は結局、誰なんだ…と視線を向ければ、『あぁそうか、僕のことか』と楽しそうに男性が口を開く。
だけど次に耳に入ってきた声は男性の声ではなく、
「会合は既に始まっています。こんなところで油を売ってるのは感心しませんね、稜真」
聞き覚えのある、耳に馴染む透き通った声。顔なんて見なくても分かる。
察したらしい女四人は
「「「「ッッ、」」」」
全員息を呑み、後ずさった。
『蓮さん』と声を掛けようとした私を遮ったのは…
「蓮ちゃん!!!!」
ド迫力で豪快なハスキーボイスだった。