うーん…気まずい!!



楓さん…『美紅ちゃーん!キャベツ取ってー!』じゃないです!




この何とも言い難い状況をどうにかしてほしい。




「あの…楓さん。そちらの方はどなたですの?」




意を決したように楓さんに尋ねたのは少し性格のきつそうな顔をした美人な女性。スタイル抜群だ…。




よく見れば…ここで料理したり広間のセットしている女の人たちみんな立ち居振る舞いがとても綺麗だ。




まぁ、楓さんの比ではないけど。



楓さんは所作も風貌も美しすぎる。その分、気を抜いてる時とのギャップがえげつないけどね。





「ごめんなさいね、どちら様でしたっけ?」




「秋庭組同盟、館山組組長の娘、館山陽子です。本日は宴会の準備の指揮を任されています」




「あらそう、ご苦労さま。私と美紅ちゃんに出来ることがあったら遠慮なく言ってね」




「いえ、楓さんに下働きなどさせられませんよ。聖弥さんにお叱りを受けます」




楓さんを挑発するようにニヤリと笑った女性。




瞬間、楓さんの空気が変わった。


え…?何…?


楓さんの持っていた菜箸がバキリと音を立てて折れる。




「貴女、誰の許可を得て人の旦那を名前で呼ばわってるのかしら?」




「失礼しました。春名の姐様は意外と狭量なんですね」




小馬鹿にするように言い放った。
これは…楓さんでなくても頭にくる。



関係のない私がイラっとしてしまった。




「口は慎んだ方がよろしいかと?調子に乗ってると組ごと潰すわよ。夫は私のことになると狭量ですから」




余裕綽々の笑みを浮かべて言った楓さんの言葉に女性が押し黙る。



テレビ番組のスカッと何とかに出てきそうなくらい綺麗な成敗だ。



思わず拍手したくなってしまった。さすがは極妻…と心の中で称える。




『楓さんに喧嘩売るとか…館山さんすごいわね…』ひそひそと周りからそんな会話が聞こえてくる。





「そうだった、美紅ちゃんのことが気になるんでしょ貴女」




「……まぁ、見ない顔の子なので」




「私は春名の人間だから秋庭から正式な発表があるまでは黙ってるべきなんだろうけど…頭にきちゃったから教えてあげる」





え、今言うの?この状況で?
というか言っていいの?




こんなんだったら最初に紹介してほしかったです楓さん…!





「館山さんだったかしら?貴女の大好きな秋庭組若頭の連れよ、この子」





「「「「え…?」」」」





館山さんだけではない。この場にいる私と楓さん以外の声が重なる。




『言っちゃった』とか何とか言ってる楓さん。笑ってる場合じゃない!