「私は他の男性と仲良くするのはダメで、自分はいいってどういうことですかね?」




「い、いや…仲良くはしてない、断じて」




「でも、少しでも期待させてる時点で同じですよね。『男共に期待させるような事してくれるな』って言ってませんでしたっけ?」





「…………はい」





弘翔みたいに大々的に公言しているわけではないけれど私だって嫉妬くらいする。



しかも彼氏がこんなに人目を引く人なら尚更…不安にもなる。



人当たりが良いところも好きだけど、私以外の女性と話しているのは見ていて気分がいいものじゃない。





「美紅さん…怒ってますか…?」




「んー?全然怒ってないよー。ただ、腹は立ってるかなぁ」




「……すいません」





助手席で高巳が『めっちゃ怒ってるじゃん…』と呟いて、純さんに睨まれている。



正直、言うほど怒ってるわけじゃないんだけど、いい機会だし言っとこ。




こんな時でもなければ恥ずかしくて言えないし。




「ねぇ、弘翔」




「はい…」




「…言わないだけで、私だってヤキモチ妬くんだからね」





言葉にしてから思い出した。
ここ車内…高巳も純さんもいる…。



何を口走ってるんだ私は…恥ずかしすぎる!



てか…




「なんで人が真面目に話してるのにそんな嬉しそうな顔してんの!?」




隣で盛大にニヤけている弘翔を睨む。



『すまんすまん』と言いつつ神妙な顔を作ってるけど、口角が上がっているのを隠せていない。





「真面目に聞いてた!?」




「聞いてたよ。ただ…可愛すぎるだろ」




そういう事じゃない!



未だにニヤけている弘翔の膝を思いっきりつねってやった。



痛いはずなのに嬉しそうに笑ってるからこっちは何も言えなくなってしまう。なんなんだこの人…ドMか!?




「好きな女に妬かれるのはこんなにも嬉しいもんなんだな」




「そういう問題じゃない!」




「クセになりそうだが…美紅を不安にさせたいわけじゃないからな、気を付けるよ」




「大丈夫だよ美紅ちゃん。弘がそんな甘い顔するの美紅ちゃんの前だけだから。甘すぎてこっちまで胸焼けしそうだわー。ね、純さん」




「俺を巻き込むな!」




バックミラー越しに伺えば、何故か純さんの顔が真っ赤だ。




弘翔がモテることに妬くこともあるけれど、別に心配はしてない。私に見せる顔と他の人に見せる顔が違うことなんてちゃんとわかってるから。




それに…いちいち妬いていられないくらい毎日たっぷり愛してもらっている。



不安になる暇もないくらいに甘やかされて、愛されている。




その自信があるから大丈夫だ。



ま、これは弘翔には言わないけどね。