こうやって近くで見るとさらに綺麗。
さっき失恋したばっかりなのに現金な奴だな、私。



「あの、これ。」



「ああそこに置いておいてください。
 きっと母からのものなので。」



「わかりました。」



荷物を置いてからと言うもの。
……気まずい。
思わず座っちゃったけど帰った方が良いんじゃないのか。



「あ、あのじゃあ私はこれで。」



「あっ、すみません。急ぎでしたか?」



「いえ、そういうわけでは。」



「……失礼でなければ、少しお話しませんか?」



「へ?」



「あまり来客が来ないので新鮮で。
 外のお話を聞かせてもらえませんか?」



そう微笑んだ顔はやっぱり綺麗で。
思わず座り直してしまう。



「少しだけなら。」



「ありがとうございます。」



にこにこと朗らかな笑顔を浮かべるこの人は。
すっと私にティッシュを渡した。