私には彼氏がいる。

1コ年上の咲人くん。

いつも「美花」って呼ばれるのがたまらなく好きだった。

でも、私は彼の声を聞いたことがない。

幼い頃に事故に遭ってしまい、

今はもうほとんど聴力は残ってない。



咲人くんの方は生まれつき目が見えなかった。

咲人くんは白杖を、私はみんなが話している口の動きをそれぞれ頼りに周りを知ろうとしている。

大変か、と言われれば、

まぁ確かに健康な人から見れば大変そうに見えるんだろうけど、

私たちからしてみればこれが"日常"だから。

昔はみんなの話してる言葉が理解できなくて苦労したし、

咲人くんだって白杖がなければ一人で動くのは不可能だって言ってた。



そういえば私たちが付きあいたての頃はよく「障碍者カップル」って言われてバカにされてた。

でも、

「あいつらに少し言われたぐらいで何泣きそうになってんだよ。

お前のことは俺が絶対守ってやるから。

だからお前は安心して俺の隣にいろ」

って一生懸命毎回私のこと守ってくれた。

本当に、咲人くんには感謝してもしきれないくらい。

ありがとうじゃ足りないくらい私のことを大切にしてくれている。

だからこそ、私も咲人くんのことを守ってあげたい。



もしかしたら他のカップル以上に私たちは試練を乗り越えてるのかもしれない。

それならそれでいい。

だって私は咲人くんが大好きだから。

もう誰に何と言われようと私が咲人くんのことが好きだっていう事実は変わることはない。



"幸せの形"は人それぞれ。

私は、その幸せの形を咲人くんと作っていきたい。


「ねぇ、咲人くん。

私はね、今とっても幸せだよ。

咲人くんの隣にいることができてとっても嬉しいよ。

だからこれからも咲人くんの隣にいさせてね。


本当に、生まれてきてくれてありがとう。


これからもずっと大好きです」