「…俺のことを好きにならせるつもりだった。」


「……?」



「初めは、俺のことを好きにならせて……裏切るのが一番あなたを傷つけられと思ったんです。」



だんだんと雲から逃れた月が、
明かりを取り戻す。


「ゆかりの存在を知って、俺の願いを叶えてくれると言った。
俺は、もう何も失うものは無かった。


失ってきたから。
何も、怖くなんかねぇんだ。」


小森くんの指先が照らし出されて私の髪に触れた。