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「菊次郎はん。いい加減どこのお人か、この蝶野にも教えてくださいな。」


「そ、それはできない!僕の素性は例えお蝶ちゃんにも打ち明けられないんだ。」




一曲聞き終わった後、
お蝶ちゃんが僕の隣でお酌をしてくれる。




「謎が多い菊次郎はんに、
ウチは益々惹かれていきます。」


「ブフッ!」


僕の目を見てそんな事を言うお蝶ちゃんに、
思わず酒を吐き出しかけた。


素性を隠して通い続けた甲斐が、
ようやくこの頃出てきました。


初めはただの客として僕の事を見ていたようだけど、

お蝶ちゃんもまた、
僕の虜になりつつあります。



・・・よし!



「1つだけはっきり言える事がある。」


「なんどすか?」


「僕は、
君に会う為にこの世に生を受けた。」