土方先生は、手にされていた扇子を上下に小さく揺すられる。


“もっと近くに来い”という合図だった。







「斉藤は、俺が差し向けた間者だ。」


「!?・・・・・誠でございますか?」


土方先生に合わせて、
私も小声で話を続ける。




「伊東が新撰組を離脱しようとしていたのは分かっていた。

尊皇攘夷の思想を隊士に植え付け、

隊長格の者まで引き抜こうとしていた奴の先手を打ったという訳だ。

斉藤はお前と同じく“義”を重んじる男。

簡単に奴らには寝返らない。」



「ご無礼を致しました。
大変申し訳ございせん。」