「龍馬と慎太郎を
“近江屋”に連れて行ったら、
拙者の名、“望月”、
もしくは龍馬が今使っている偽名、
“才谷”の名を出せ。
さすれば主人が匿ってくれる。」
「御意。」
「では、拙者はもう屯所に戻る。」
「必ずやお役目お果たし致します。
明日は風邪を偽って島原を休み、
私も“近江屋”に留まり、目を光らせます。」
「うむ。・・・・そう言えば、
この部屋に来る前にお前が相手をしていた男、
“金の羽振りは良いが得体の知れぬ男”
と番頭が申しておった。何者だ?」
「紀州藩 香山 菊次郎という男でございます。
恐らくは・・三浦 休太郎の差し金。」
「紀州か・・・。
いろは丸の一件以来、龍馬は紀州藩からも恨まれるようになったからな・・。」
「ご安心下さいませ。
このお蝶、色を仕掛け、
奴を骨抜きに致しました。
もう彼奴に、坂本様を殺そうなどという気力はございません。」
「・・・・フッ。頼りになる女だ。」