茜を学校祭中の美術室で見てから、私は毎日そこに通った。

授業の合間の短い休み時間にも行った。

けどそこには、次の時間に美術があるクラスの人がたくさんいて、茜はもちろんいなかった。

その日の放課後にも行ってみた。

そこには美術部の生徒がいた。

五、六人の女子がいて、皆キャンパスを広げただけで夢中でしゃべっている。

一人男子がいて、その子は真面目に絵を描いていたけれど、もちろん茜ではない。

戸口から中を見つめる私に気付いた女子が変な顔をしたので、私はそそくさと教室を去った。

その日はいったん家に帰った。

でも考えるのは茜のことばかりだった。

あの時、自分の携帯の番号を教えておけばよかったと後悔した。

そして、なんとなく茜は携帯を持っていないような気がした。

本当になんとなくだったけれど、それは確実に当たっている気がした。

(でも、教えておけば家からかけてきてくれるかもしれない。)

そう思って、私はまた後悔の念にとらわれた。

明日、早く学校に行ってみよう。そうすれば会えるかも。自分に言い聞かせて、私は早々と眠った。