茜はまるで、人間の手によって造られて、人間のように動いたりしゃべったり自由自在な人形のようにみえた。

茜には、なぜだかそういう雰囲気があった。

外見もそうなのだろうが、発言の一つ一つや、手の動かし方やなんかが上品すぎて、可憐すぎて、儚すぎて、逆に現実離れしていた。

「チハルさん?」

茜が首を傾げた。

ああ、折れてしまう。あたしは懲りずにそんなことを思った。

茜の首は、重い頭を支えているのが不思議なくらいに華奢だった。

「あ、ごめん。ちょっと考え事。」

私は焦って視線を反らした。

「家族の事ですか?」

「まあそんなとこ。」

私は適当な嘘をついた。

茜は再びキャンパスに向かう。

私は周りの空気が、なぜだか話しかけてはいけないバリアを張ったみたいに感じて、口を閉ざした。

その時、体が痙攣してしまうほど大きく、チャイムが鳴り響いた。

大きく感じたのは私だけで、茜はけろっとして時計を見上げていた。