同級生からももちろん、サッカー部の先輩や後輩にも慕われている翼くんは、私にとって憧れの人。
だから私が想う翼くんへの気持ちは、きっと憧れから来てるものなんだと思ってた。
だけど、それが『恋』なんだと気付いたのは最近のこと。
2年生になったばかりの春。
クラスの女子からの推薦で断ることができなかった私は、学級委員になってしまった。
今学期の目標を考えて模造紙に書いていると、同じクラスの中島さんに声をかけられた。
「紺野さぁーん、あのね、先生に廊下の掃除頼まれたんだけど…私、もうすぐ塾の時間なんだよね」
その文脈で気付いた。
“ あ、これはサボりたいんだな ”って。
「紺野さん、お願いっ!代わってくれない?」
両手を顔の前で付けて頼んでくる中島さんに、そのお願いが嘘だとわかっていながらも断ることが出来なくて……。
これも学級委員の仕事か…と自分に言い聞かせて承諾しようとした時。
「あのさ、中島。お前嘘つくならもっと小さい声で話せよ。塾じゃなくて、カラオケだろ?」
隣には中島さんを冷たい顔で睨む翼くんがいた。
「掃除ぐらい、やって行けよ」
「うっ……佐々木…分かった…わよ」
中島さんは唇を噛んで教室を出て行った。