「陽子、おはよう」


教室に入るなり、幼なじみの田中真澄(たなかますみ)が駆け寄ってきた。


「おはよう」


「ちょっと聞いてよ!」


「何、どうしたの?」


真澄は周りを見回して、


「あたし、見ちゃったの」


と、声のトーンを落として言った。


「見ちゃったって、何を?」


「松浦先生よ」


松浦は、陽子たちの担任の女教師だ。


「昨日、あたし部活で帰りが遅くなってさ、近道しようと思っていつもは通らない道を通って帰ったの。そしたら――」


と、真澄はまた周りを見回して更に小さな声で、


「松浦先生と4組の西尾くんがホテルに入って行くの見ちゃった!」


「えぇ!?」


陽子もそれには驚いた。


「先生と生徒・・禁断の恋ね」


「でしょ!もう、誰かに言いたくてウズウズしてたの。あー、スッキリした」


二人は空いている席に並んで座った。


「でもさ、松浦先生独身でしょ?生徒っていうのはビックリしたけど、恋愛は自由でしょ」


「陽子ってば、大人だね。やっぱり彼氏いると違うのかな。あー、あたしも彼氏欲しい!」