けれども、せっかく先生の前から去ろうとしたのに、とうの先生から腕を掴まれて逃げ出せない。


「わ、わすれてください。なかったことに、してください……。せんせいのめいわく、に、なりたくないんです」

「俺は迷惑だなんて思わねぇよ」


思いの外優しい先生の声に驚いて顔を上げれば、ふいに先生の腕の中にとらわれて先生の顔を見ることができない。

突然の展開に、あたしの涙は止まってしまった。


「服、汚れますよ」


せめてもの抵抗に先生にそう言えば、先生はカラカラと笑って、気にすんなと答えた。