あぁ、思ったよりも先生との思い出は多かった。

けれども、あたしの素直じゃない口は皮肉を言葉にする。


「あたしがバカで良かったですね」


先生はそれには答えず、あたしの頭を軽く小突いた。

あたしは軽く笑って、先生の背中に腕を回した。


「でも、あたしだってズルい人間ですよ」

「どこが?」

「……最後だから、もう会えなくなるから、だから、先生に『好き』って言ったこと」

「ズルくなんかねぇよ」


先生は小さく笑って、また流れ出していたあたしの涙を優しく拭う。

どうして涙が出るんだろう?