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「本当に送ってくれなくて良かったのに」


「…………」


「瀬那って、実は私のこと大好きだよね。そんなに夜道を1人で帰すの心配?」



「……相変わらずうるせーやつ」



瀬那の部屋で満腹になったお腹が落ち着いてきた頃、瀬那の勉強の邪魔にならないように『また明日ね』とだけ告げて立ち上がった私に、


いつもなら『気をつけろよ』ってだけ返ってくる瀬那の言葉は聞こえなくて。


不思議に思って首をかしげた私に『送ってく』って瀬那は勉強机から立ち上がった。


そのことがどれだけ嬉しかったかなんて、もちろん言葉では言い表せなくて。


だけど、瀬那の大事な時期に無理やり家まで毎日会いに来ている私を送って帰ることに、わざわざ瀬那の大事な時間を割いてもらうのはどうしても悪い気がして、もちろん大人な佑麻ちゃんは何度も1人で大丈夫だって言ったんだよ!?


まぁ……結局、送ってもらっちゃってるんだけど。




「あーあ、もう家に着いちゃう」



心の声がポロッと溢れて、慌てて口を手で塞いだ。瀬那との時間はすごいスピードで流れていく。今はそれがこんなにも惜しい。


瀬那もそう思ってくれてるかな?
早く帰って勉強したいって思ってるかな?



チラリと盗み見る横顔は、やっぱり暗闇の中でも一段とかっこよくて。



「なに?」


「な、何でもない」



あぁ、もう。
ギューーーッて抱きしめてこのまま帰したくない!って本気で思ってる私は変態以外の何者でもないかもしれない。