俺はバスの中に居る時と降りてから家に着くまで、マスクと眼鏡をかける




顔を晒すと女どもが騒がしいからである




そのお陰で、バスの中の誰一人として蓮の存在を認知できていない




『静かで楽だが、ぎゅうぎゅうすぎてキツい…。』




『やっぱり施田(しだ)の言う通り、車を学校に着けて貰うんだったな…』




この施田というのは、三浦家で蓮の生まれる前から住み込みで執事をしている男の事である




三浦家は、三浦財閥という先祖代々続く大会社の一家であり、日本のみならず世界中にも幅広く事業を拡げている




三浦家には三人の子供がおり、蓮は三男で、小さい頃からの英才教育と楽器等、専門的な習い事をしていた




長男は、会社の跡取りとして、次男は会社の幹部及び長男の右腕となり、三男の蓮は会社の業績アップの為に芸能界へ




蓮にとって、この学校に通うことは、三浦財閥の為であり、自らの意思と関係ない為に、あまり乗り気ではないのである



しかし、大人しく言うことを聞いているのは、財閥の大きさや抱える社員の数、そして近年の不況による余波を受けピンチにある為だ